陸前高田市の歩みを学び、スタンフォード大?香港大生らと共に考える持続可能なまちづくり

グローバル教育センター

2024/12/13

RIKKYO GLOBAL

OVERVIEW

陸前高田市の方々と立教生?海外大学生(スタンフォード大等アメリカの複数の大学?香港大学)が共に考える正課プログラム「陸前高田プロジェクト」。
2024年度の参加者、津久井さんと西山さんにお話をうかがいました。

高田松原津波復興祈念公園

「陸前高田プロジェクト」は、東日本大震災の被災地である岩手県陸前高田市でフィールドワーク(4泊5日)を行い、同市のこれまでの歩みや現状、課題を共有し、陸前高田市の方々や参加者全員が共に様々な問題について考えるプログラムです。2013年度からスタートし、現在まで継続して実施しています。2024年度は7月13日および8月24日~30日にプログラムを実施。立教大学、アメリカのスタンフォード大学、カルフォルニア大学バークレー校、同デービス校、キーン大学、および香港大学より、専攻や学年の異なる24名の学生が集まり、ともに課題に取り組みました。

陸前高田市役所にて

プログラムテーマは「陸前高田市の歩みから持続可能な都市について学び、地方都市が持続可能な都市となるために自分たちにできることを考えよう — SDGs Goal 11『住み続けられるまちづくりを』の視点から— 」。4つの観点(包摂性[inclusive]/安全性[safe]/強靭さ[resilient]/環境の持続可能性[environmentally sustainable])をヒントに、フィールドワークの学びと自分たちの住むまちを比較しながら考察を深めました。
陸前高田市におけるフィールドワークでは、復興祈念公園や津波伝承館、震災遺構および現在の市内の様子を視察しました。また、市役所政策推進室や市で事業を営む方々、子どもの時に震災を経験した若い世代の方々等多くの皆様にご協力をいただき、震災前からこれまでの歩みや現在の生活?取り組み、課題についてお話をうかがいました。学生たちは、様々な角度より語られるご経験から気付き学ぶとともに、お話いただいた方へのご質問やメンバー同士の意見交換、個人の振り返りを通して自身の考えを深めました。
最終日に立教大学で行った報告会には、お話いただいた陸前高田市の皆さんにもオンラインでご参加いただき、フィールドワークからの学び、そしてSDGs Goal 11「住み続けられるまちづくりを」の観点から検討した内容をグループごとに発表し、報告会参加者全員で共有しました。
インタビュー学生名
津久井 夏葵(Tsukui Natsuki)さん
社会学部メディア社会学科4年次
西山 裕翔(Nishiyama Yuto)さん
経済学部経済学科3年次

プログラム参加の動機や目標を教えてください

津久井さん

私はこのプログラムに参加するまで東日本大震災の被災地に行ったことがありませんでした。普段の生活においてメディア?展覧会などで震災の情報やその表現に触れる中、自分の視点から見つめる「被災地」が心理的に遠いものとして認識される感覚がありました。だからこそ、陸前高田に行って、そこに住む人々の声を聞いたり、徐々に形を変えながら再建されていく街の様子を見たり、あるいは防波堤の向こうからやってくる海風やその匂いを感じたりと、五感を使うことによってその距離を埋めたいと考えていました。

実はプログラム自体は大学1年生の頃から知っていたものの、なかなか応募する決心がつかず先延ばしにしていました。しかし今年が最後のチャンスだったので、この機会を逃したくないと思い申し込みました。

西山さん

東日本大震災津波伝承館-いわてTSUNAMIメモリアル

私の参加動機は、震災からの復興過程を現地で学び、地域の持続可能なまちづくりへの取り組み方と国際的な視点を得ることでした。特に、スタンフォード大学等のアメリカの複数の大学や香港大学といった海外学生と共に考える経験は現代のグローバル社会において貴重な経験になると思い参加を決めました。フィールドワークを通じて災害からの再建の難しさを身を持って理解すること、そして、様々なバックグラウンドを持つ人との交流を通じて異文化理解を深め自分の視野を広げることをプログラム参加の目標としました。

プログラム中、特に印象に残ったことを教えてください

西山さん

“発酵”をテーマにした商業施設CAMOCYで地元の方と交流会

東日本大震災を経験した地元の若い世代の皆さんと夕食を囲んだ交流会です。実際に震災を経験した方々から話を聞くことがどれほど重要であるかを身に染みて感じました。特にテクノロジーが発達した現代、検索エンジンやAIチャットボットで質問をすればすぐにほしい情報が手に入ります。しかし、そうしたツールやメディア、SNSを通して手に入れる情報と現地の方から直接うかがう現実には隔たりがあると気づきました。

インターネットに流れている情報を鵜吞みするのではなく、実際に足を運んで自分の目で見たり、話を聞いたりすることの重要性を改めて認識した時間でした。

津久井さん

私がとりわけ心にかかっているのは、訪問したご家庭で、ご夫婦と私より一歳年下の娘さんが話してくださった被災経験のお話です。彼、彼女らの口から語られる経験は生々しく、その重みに対して私自身の言葉を発することは難しいと感じるくらいの衝撃と絶望感を抱き、私は静かにその言葉に耳を傾けていました。

当初、ご夫婦に対して被災について聞くのは憚れると思い、お尋ねしてよいものか直接ご本人に相談をしました。すると「私たちは話すことで癒される」とおっしゃってくださり、被災経験を「話してもらう」ことへの抵抗感が薄まると同時に、私が「聴く」ことが目の前の彼、彼女らの回復につながることがあるのだと知覚した瞬間でもありました。

プログラムテーマに即して、考えたことを教えてください

津久井さん

3.11仮設住宅体験館見学

「住み続けられるまちづくりを」の観点から、私たちのグループはコミュニティの「レジリエンス」(災害に対する強靱さ)に着目しました。陸前高田の方々との交流の中で、他者との繋がりを有しているその感覚自体が本人の心の回復に寄与するのではないかと考えたからです。前述のご家族もそうですが、お話を聞かせていただいた方々の大半が誰かとの繋がりについて話をしてくださいました。共同体としてのコミュニティカフェ、村の自治や仮設住宅など、人々が集う場や空間における互いの繋がりに加え、ともすると可視化されづらい個々人の小さな繋がりも多数存在します。

他者との交流は端的に数字で表し計測できるものではないからこそ、一人一人がいかにして誰と共にあるかを意識するかが重要で、その感覚こそが街の持続性を生み出すのかもしれないと考えました。

西山さん

長洞元気村

私たちのグループではコミュニティの「包摂性」の重要性に着目しました。SDGsの達成のために「no one will be left behind」という理念が示されているとおり、日本であろうと海外であろうと、誰一人取り残されることなく、誰もがコミュニティの一員であることを自覚できる環境づくりが重要なのです。その理由は人というリソースが持続可能なまちづくり作りにおける基盤となるからです。

陸前高田ではこのコミュニティの包摂性が保たれていると感じる場面が多くありました。実は私自身の生活するSHIMOKITA COLLEGEでも年齢や国籍に関わらず新しいメンバーを歓迎する姿勢が強いコミュニティ作りに貢献しており、今回両地域に共通する点を多く見出しました。「包摂性」はもともとその地域に暮らす人々と新しく加わる人々、双方にとって不可欠な、地域住民の帰属意識を育むものだと実感しました。

陸前高田プロジェクトは国際交流×地域交流のプログラムです。このプログラムならではの学びや達成できたこと、身に付いた力を教えてください

長洞元気村にて

西山さん

私はこのプログラムで、異なる文化や背景を持つ人々と協力し合う力が養われたと思います。特に、震災を経験した地元の方々との対話を通じて、課題解決に向けた実践的なリーダーシップや、包括的な視点の重要性を学びました。また、海外大生との共同作業を通じて、異なる視点や共通の目標に向かって協力的に働く方法について、より深い理解を得ることができました。

この経験を通じて、異文化理解やコミュニケーションのスキルが向上し、より多様な視点から物事を考える力が身についたと感じています。

津久井さん

民家訪問

本プログラムでは、参加者同士が異なるバックグラウンドを有するからこそ、私が知覚し得ない視点から陸前高田を捉え、言葉や素振りを通して表現している様子を目にしました。もちろんその中には人種の違いから生じる困難もあったようで、グループメンバーがそのことを打ち明けてくれました。私は彼が経験した辛い状況を聞きながら、申し訳なく思うと同時に、私自身がすぐに世界を変えることはできないけれど、少なくとも彼の話を聞いて彼の心を軽くことはできるのだと、ここでもまた耳を傾けることの力を意識しました。

何よりも、陸前高田の方々と直接に言葉を交わすことができたのも良い経験です。東京の街で大学生として暮らす私自身の生活圏から飛び出し、陸前高田の方々が何を考えてこの街で日々の営みを紡いでいるのか、彼、彼女らと時間を共有することで、多少なりともありのままの姿を垣間見ることができたように思います。

本プログラムの学びを今後どのように活かしていきたいと思いますか

津久井さん

普門寺にて

今回「話を聴く」こと自体が誰かの心を癒す力になることを理解しました。たとえ私がその人の問題や困難を解決する、直接的な技術や手段を有していないとしても、彼、彼女らが紡ぐ言葉に耳を傾けることそれ自体は可能であり、私にもできることです。

陸前高田に行く前は、私のような被災経験の無い人間が「被災地について語る」ことへの抵抗感がありました。しかしながら、少なくとも私自身が言葉を繋がなくとも「聴く」ことはできるし、その姿勢は被災経験に限らずあらゆる傷の癒しにつながりうる、そしてそれは私という存在がいますぐに様々な場面で実践できるケアの行為であるのかもしれないと、考えるようになりました。

西山さん

私はこのプロジェクトで培ったリーダーシップと協調性を、今後のキャリアに活かしていきたいと思っています。このプロジェクトは、アイデアを議論するだけでなく、行動し、計画を実行することの大切さを教えてくれました。

また、プログラム中の行動規範として示されたABCO(Active, Brave, Curious, Open-minded)のマインドセットを日常でも大事にし、異なるバックグラウンドを持った人々と一緒により良い未来に向けて社会やグローバルな課題についてディスカッションを重ね、アイデアを出し合い、実行していけたらいいなと考えています。

今後、陸前高田プロジェクトへの参加を考えている学生に向けて、メッセージをお願いします

最終報告会の最後にオンライン参加者とご挨拶

西山さん

「陸前高田プロジェクト」は、実際に現地に足を運び、生の声を聞き、震災後の復興や地域の課題を肌で感じられる貴重な機会です。さらに、異なる背景を持つ人々と共に考え、学び、成長できる場でもあります。自分自身の視野を広げたい、実際の問題解決に関わりたいと考えている学生には、ぜひ参加をお勧めします。現地で得た知識や、異なる文化?国?地域?価値観の人たちとの交流は今後の人生において大きな財産となるはずです。

津久井さん

このプログラムへの参加に不安があったとしても、応募をためらうより参加をしてみてから悩んだり迷ったりするほうが良いと思います。自分の体で現地に行かなければ得られない情報や感情があります。フィルターを通していない、生の陸前高田を享受できるのが「陸前高田プロジェクト」です。現地の方との交流はもちろん、立教や海外大学の学生たち、プログラムコーディネーターの方々から得られる刺激も大きいものでした。それは私がここで言葉を尽くしたとしても伝えきれないと思います。

もし多少なりとも「行ってみたい」気持ちがあるのならば応募フォームを送ってみてください。

最後の記念撮影

あとがき

※記事の内容は取材時点のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。

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