「同志社大学と立教大学」
相互協力?連携に関する協定締結 記念対談

同志社大学学長 小原 克博 × 立教大学総長 西原 廉太

2024/07/31

トピックス

OVERVIEW

5月7日、同志社大学と立教大学が相互協力?連携に関する協定を締結したことを記念し、小原学長と西原総長の対談を実施。同時期に京都と東京で創立し、キリスト教に基づく教育を実践する両大学は、かねてより教育研究や学生団体間での交流を続けてきました。これまでの歩みと構築してきた関係性を振り返りながら、可能性に満ちた未来について語り合いました。

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「同志社大学と立教大学」相互協力?連携に関する協定締結 記念対談

同志社と立教の150年を振り返って

同志社大学学長 小原 克博:神学部神学科教授。専門はキリスト教思想、宗教倫理、一神教研究

西原 まずは同志社大学の歴史についてお話しいただけますか。

小原 同志社大学の起源となる同志社英学校が、1875年新島襄によって創立されました。若い頃から好奇心旺盛だった新島は幕末の1864年に国禁を犯して脱国し、アメリカやヨーロッパで見聞を深め、キリスト教の洗礼を受けて1874年に帰国しました。そして翌年、京都に「同志社英学校」を創立します。当初、教員は新島とデイヴィスという宣教師の2人、生徒は8人、合わせて10人という少人数からのスタートでした。
いずれは専門的な学部を備えた総合大学を創りたいと願っていた新島は、晩年を大学設立運動のために捧げています。新聞や雑誌に「同志社大学設立の旨意」を公表して資金集めに奔走し、2024年7月から発行される1万円札の肖像になる渋沢栄一などから多額の寄付を集めました。

立教大学総長 西原 廉太:文学部キリスト教学科教授。専門は、アングリカニズム、エキュメニズム、組織神学、現代神学

西原 思いに共鳴した人が多くいたのですね。

小原 同じ時代に場所は違えど、立教大学も似たような境遇にあったかと思います。例えば戦争の時代、宗教教育を禁じる「文部省訓令第12号」(1899年)が発令された際は、立教や同志社をはじめとするキリスト教系の学校が協議し、共に課題と向き合い、苦労を分かち合いながらミッションを守り続けました。今もなお世界各地で戦争は起こっていますが、こういう時代だからこそ、立教と同志社はパートナーとして「平和」について語り合う必要があると感じます。

西原 今回の相互協力?連携に関する協定は、同志社と立教だけにとどまらず、日本の高等教育全体において大きな貢献を果たし得ると同時に、私たちはそのような責任を背負わなければなりませんね。
小原 立教大学の歩みについても解説いただけますか。

西原 アメリカ聖公会の宣教師であるチャニング?ムーア?ウィリアムズ主教が、東京?築地に「立教学校」を開校したのが、立教大学の始まりです。若者への教育を行うことこそが自分のミッションだと確信し、教会よりも先に学校を創ったんです。数人の生徒と共に歩み始め、今となっては総合大学へと発展しました。ただし、ウィリアムズ自身は「種まき」をしたまでで、育ててくださるのは神様だという思いだったようです。また、ウィリアムズは自分が書いたものや作り上げたものを、日本を去る前に全て焼却処分するように命じていました。そのような生き様が「道を伝えて己を伝えず」という言葉で表現されていて、本学が大切にしている建学の精神の要素が含まれているように思います。

相互協力?連携に関する協定を機に、同志社と立教の関係を深める

  • 同志社大学と立教大学は相互協力?連携に関する協定を締結し、主に次の項目について合意を結びました。
    (1)キリスト教の諸活動における相互協力及び連携
    (2)教育における相互協力及び連携
    (3)学術研究における相互協力及び連携
    (4)学生の正課外活動における相互交流
    (5)教職員の人事交流
    (6)ファカルティ?ディベロップメント(FD)及びスタッフ?ディベロップメント(SD)における相互協力及び連携
    (7)教育研究施設、装置及び設備の共同利用
    (8)その他両大学が必要と認める事項における相互協力及び連携

西原 それぞれについて夢を語り合いたいと思います。
(1)キリスト教の諸活動における相互協力及び連携に関しては、合同で礼拝や音楽会、キャンプなどを実施するアイデアが出ていました。
小原 大変有意義な交流が望めると思います。キリスト教といっても聖公会(立教)と会衆派(同志社)の伝統は異なりますから、学生たちがキリスト教の多様性を理解し、教派や立場を超えて協力しようという姿勢を持つきっかけを創出できるといいですね。

西原 (2)教育における相互協力及び連携では、単位互換などの仕組みを取り入れながら、例えば「立教サービスラーニング(RSL)※1」や「ACEプログラム※2」に同志社の学生に参加いただいたり、同志社がドイツのテュービンゲン大学内に設置したEUキャンパスでのプログラムに立教の学生が参加したり、互いのリソースを生かした取り組みが考えられます。
小原 大賛成です。京都は東京に比べて都市の規模は小さいものの、長い歴史や宗教文化に触れられる場がたくさんあります。そういった環境に身を置くと、ハッとするような体験や学びが得られますから、普段首都圏で生活している立教の学生には、ぜひ訪れてほしいと思います。
またEUキャンパスでは、同志社?立教?テュービンゲンの3大学の学生が交流するという面白い取り組みも可能になりますよね。互いに持っているプログラムや学びの場を提供し合うことで、学生が今までになかった教育機会に触れられるようになれば、両大学の学生にとって非常に大きなメリットとなります。

西原 もちろん、学年暦や授業時間の違いもありますから、まずは夏季集中プログラムなどから始めるということも考えられます。

小原 両大学の教育システムの刷新も視野に入れつつ、実現への道を探りたいですね。
西原 (3)学術研究における相互協力及び連携では、両大学共に先端的な研究者が数多く在籍していますから、共同研究を推進していきたいです。特に、同志社大学大学院の「アドバンスト?リベラルアーツ(ALA)科目群※3」では非常に先進的な取り組みをされています。オンラインも活用しながら、立教の大学院生の参加機会をいただけるとありがたいです。

小原 十分可能性がありますね。私たちが追求すべきなのは、今まで以上に多様性のある教育環境だと思うのです。若い世代だけで学び合うのではなく、年配の方もいれば企業の方もいる。多様性の高い環境で、共通の課題に向き合い議論することが、学生の成長につながるのではないでしょうか。

西原 立教には50歳以上の方が対象の「立教セカンドステージ大学」があります。今まで積み重ねてきた経験を、いま一度言語化したいという思いを持った方がたくさんいらっしゃいます。そういった方々に対して学びを提供するのも、大学の使命の一つだと考えています。
さて、続いては(4)学生の正課外活動における相互交流です。同志社と立教には、昭和初期から続く学生交流の歴史があるんですよね。1928年にテニス部が「同立定期戦」を開始し、交響楽団は1961年から「同立交歓演奏会」を行っています。

小原 改めて調べてみると、学生交流の歴史は本当に古いんだと実感しました。その事実を受け止め直した上で、きちんと光を当てることによって、今まで以上に双方のスポーツ?文化交流が活性化することを願っています。

西原 「同立定期戦」で学長杯を授与する、といったことも考えられますね。
続いて、(5)教職員の人事交流について。1、2年間の研修派遣や出向、あるいは各部局間で定期的な会合を設けることができれば、それぞれが自分の大学について客観的に見ることができますし、お互いに参考になる部分もあるでしょう。

小原 組織が大きくなると、さまざまな課題が生じます。しかし他を知れば、課題を乗り越えるための新たな道を切り開くことができるかもしれません。人事交流をきっかけに、組織の活性化につなげたいですね。

西原 (7)教育研究施設、装置及び設備の共同利用については、同志社にとっての首都圏拠点、立教にとっての関西拠点として、キャンパス内外の施設の相互利用が可能になると、大変ありがたいなと思います。

小原 双方の学生にとってプラスになります。ぜひ積極的に進めていけるといいですね。

西原 相互協力?連携に関する協定をきっかけとして、同志社大学と立教大学の学生?教員?職員の他、さまざまなステークホルダーの協力関係を強固なものにし、共に未来へと歩んでいきたいと思います。
本日はありがとうございました。
※1 立教サービスラーニング(RSL):シティズンシップや他者との協働などをテーマに、学内だけでなく、社会の現場でも課題に取り組みながら学ぶ科目群。
※2 ACEプログラム:立教大学、ソウル大学校、北京大学、シンガポール国立大学の4大学が連携し、新しいグローバルリーダーの養成を目的としたプログラム。
※3 アドバンスト?リベラルアーツ(ALA)科目群:同志社大学大学院の教育プログラム。大学院で身に付けた専門性を社会の現場で生かすために必要な、知識を運用する品性と精神を養う科目群。関連科目を社会人と共に受講し、イノベーションと個人の成長を創出することを目指す。


※記事の内容は取材時点(2024年5月7日立教大学池袋キャンパスにて)のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。

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